『―― 相対するイメージのトップアイドル二者、衝撃のコラボレーション!』
雑誌のトップページを飾る、大きな大きな見出し。
その横には新曲の紹介やCDの情報、
そして二社のプロデューサーに対するインタビューと対談がつらつらと書かれている。
『今やトップアイドルとして世間で大ヒット中のイヴ君とユカ君!初のコラボレーションとの事ですが、一体なぜ?』
『イメージが相対する一見違う世界に居るかのような彼ら、実は母校を同じくする先輩後輩なんですよ』
『なるほどですね!確かに、キュートで優しげなイヴ君に対し、セクシーで危うげなユカ君、イメージは真逆ですね!』
『ええ、二人一緒に売り出すにあたり、どうひとつにまとめるか大変でしたよ(笑)』
『そうですよね、最終的にどのようにまとまったのでしょうか?』
『どちらかのイメージに寄せると当然どちらかの色を殺す事になってしまうので、双方ありのままで、と考えた結果
言うなれば天使と悪魔や、囚われの姫と魔王・・といったイメージでまとまりました!』
『なるほど!これが案外しっくり来るんですよね~!』
『そうでしょう!イヴ君には魅惑的で、簡単に拐われてしまいそうな儚さを、
ユカ君には挑発的で、奪った物は二度と離さないとでも言うような力強さを強調してもらいました』
『二人共イメージにとてもピッタリです~!』
「ピッタリです~!じゃないよお!!!」
びたんとテーブルに読んでいた雑誌を叩きつけ、イヴは声を上げた。
「ふふっ、どうしたのイヴ」
キッチンの方から、台所借りたよと2つのカップを手に、喚くイヴを見て微笑むユカが声を掛ける。
「何で僕が姫でユカがセクシーな魔王なんだよ!納得がいかない」
渡されたカップに勢いよく口を付け、あちっ!!と叫び涙目で舌を出す。
「・・・・そういう所じゃ・・?」
「何か言った?」
「いえ何も」
ユカは変わらずにこにことイヴを眺める。
同じアイドル養成学校を卒業し早数年、今やトップアイドルの二人、お互いの扱いには慣れたものだ。
「僕、そこまで小柄な訳じゃないし、ユカに負けないくらい鍛えてるんだよ、これでも」
「え、そうなの?」
ユカには初耳だった。そうだよ、ほら。と腕の力こぶを見せるイヴ。確かにその腕はしっかりと太さがある。
「ユカより力あると思うよ」
「それは嘘だ」
「言ったな、ちょっとこっち来いよ」
二人共立ち上がり、イヴがヤァ!と声を上げるとユカの身体を軽々と抱き上げた。
「うわ!?」
「ほら見たかー!」
そのままぶんぶんと振り回され、ユカは小さく抵抗しながらイヴにしがみついている。
当然慣れないというのもあるが、案外恐ろしい。
「ぜえぜえ・・いつの間にこんな力を・・・・」
「ぜえ・・っ、僕、元々結構力あるよ・・・」
「は?だっていつも・・・・・・・・」
言葉を詰まらせ、ベッドの事を思い出してユカは少しだけ頬を赤らめる。
何だかんだ言いながらも、イヴをベッドに縫えなかった時など無かった。
つまりなんだ、いつでも力ずくで抵抗できたのに、大人しく押し倒されてくれてたとでも言うのか?
それはとても愛おしく思えて、ちらりとイヴの方を見やる。
イヴはまだ息を整えている所だった。
「鍛えてるんじゃなかったの・・」
「はあ、疲れ・・んむっ!?」
吐息を奪うようにして口付けた。
そのまま優しく舌を絡ませていつものように、二人で座っても余裕のソファーにイヴをそっと押し倒した。
「もう、またそうやって急に・・っ」
今日も何だかんだ言いながらもこうやって、押し倒されてくれる自分だけの姫を
腕の中に捕らえた。