*キャラクター

 ジェイド


青々とした芝の広がる、ポケモン達がのびのびと過ごせる

簡素な柵に囲まれた敷地内の隅で、

春の訪れを喜ぶ小さな花々を眺めながら散歩する青年がひとり。

その草花に負けないほど鮮やかな長い長い緑の髪を、穏やかな日差しで暖めていた。

桃色の花に呼ばれるようにしてしゃがみ、顔を寄せると、

それを見計らったように後ろからポケモンが抱きついてくる。

「ふふ、今日もいい天気ね。」

花に目を落としたまま微笑むと、ポケモンも

おひさまの香りのする髪にもふもふと埋もれて嬉しそうにしている。

 

ここはポケモン育て屋。

忙しいトレーナー達のポケモンを預かり、代わりに世話をする場所。

埋もれていたポケモンとは別のポケモンに、髪に花を生けられている

この世話係の青年はジェイド。今日も後頭部が賑やかだ。

 

「さて、アンタ達ー!そろそろ朝ごはんにするわよー!」

広場の隅まで届くよう声をあげると、ポケモン達がわらわらと集まってきた。

「ヤダちょっとアンタ達足元ちょろちょろしないで!踏むわよ!」

もちろん踏んだりはせずに、隙間をぬって器用に歩く。

これには慣れたものだ。

 

「じゃーん!ジェイド特製ポフレでーす♡お行儀よく食べてね」

色とりどりのカップケーキのようなものを

今か今かと待っているポケモン達の前にひとつひとつ置いていく。

言われた通り、皆行儀よく楽しそうに食べている。

「何て言ってるのかしらねぇ、あーあ、アタシにもポケモンのこえが聞けたらなぁ。」

残念そうにはするが、表情を見てるだけでもなんだか満たされたような気分になり、

それを眺めながら自分もバタートーストを食べる。

 

「さあ、洗濯物干そうーっと!手伝ってくれる人ー?」

ジェイドが軽く手を挙げ言うと、ポケモン達も元気よく、はいはい!と手を挙げる。

「よし!じゃあ行きましょうか!」

洗濯かごを持ち上げ、また足元でわらわらするポケモン達を避けながら外へ出る。

小さなハンカチなどは小さなポケモンに、大きなシーツなどは大きなポケモンに渡しながら、

みんなで洗濯物を干していく。

「ふー、みんなでやるとあっと言う間に終わるわね!助かったわ、ありがとね。」

得意げな顔をしているポケモン達を撫でてまわる。

 

そこへ一人のトレーナーが「こんにちはー」と声を掛けてくる。

「あらいらっしゃい、旅の方かしら?疲れたでしょう、どうぞゆっくりしていきなさいな!」

ジェイドがトレーナーに駆け寄りつつ、ポケモン達に軽く指をさすと、

手持ちのジャローダ、マラカッチ、ドレディアが

それぞれティーバッグ、ポット、マグカップを持ってくる

・・・が、ドレディアはすごくのんびりしている。

「もーアンタは・・・いつまで経ってもお茶が入れられないじゃない!」

その様子を見てトレーナーが軽く笑っている。

「ごめんなさいねやかましい所でー」

「いえ、いい人そうで安心しました」

「ヤダもー!褒めたって何も出ないわよー!」

ポケットから小さな袋に入ったクッキーを取り出し、差し出した。

 

トレーナーから鳥ポケモンを預かり、外へ出て見送る。

「さて、アタシはジェイド、よろしくね。」

しゃがんで挨拶をすると、ポケモンは羽をバタバタさせて粉を飛ばす。

「いやぁぁぁ!!!誰か鳥用ブラシ持ってきて!!」

声をあげるとジャローダが素早くブラシを咥えて持ってくる。

「ありがと!もー!!よく見たらアンタもっちゃもちゃじゃないの毛が!!」

口調にしては優しく、ブラシでしゃかしゃかといてやると、

ポケモンは心地よさそうにしている。

「アンタの主人にはこれと同じブラシを売りつけてやるわね。」

と棚のストックを確認しながら言った。

 

するとまたトレーナーが顔を覗かせ、「こんにちはー」と声を掛けてきた。

「あらあら今日は大忙しね!」

鳥ポケモンを胸に抱え、ブラシをかけながら言う

「ようこそ、ポケモン育て屋へ!ゆっくりしていってちょうだい」