*キャラクター

トワレ

オード

ブルク

(レド)

(ライハ)


本日も晴天。

オードは、真っ青な空を、真っ青な髪をなびかせ、真っ青なポケモンに跨りゆく。

ひと仕事終え、次の仕事も片付けてしまおうと、みっつ隣の町まで移動している所だった。

灰色の町を見下ろし、コンクリードジャングルとはよく言ったものだなあと呟いていると、

見覚えのある小さな人影を見つけた。

「・・・!サザンドラ、あれ!あそこに降りてくれ!」

サザンドラもその人影が見えたようで、嬉しそうに鳴き、急降下した。

「おわわわっ!ちょっ、ゆっくり!」

 

『~♪』

「・・・・・・・」

今日も今日とて、天気はいい。ニャスパーもご機嫌だ。

さっきからずっと何の歌かも分からない歌を歌っている。

俺は、正直眩しくて仕方がない。

太陽をちょっと睨んでやろうとふと上を向くと、黒くて大きな影がすぐ目の前に降ってくる。

「・・・!?」

土埃を上げ着陸したそれを見ていると、きょとんとした兄の顔が見えた。

「オード・・・その顔したいのは俺の方なんだけど・・・・」

「おう・・・・・・・」

オードはパッパと服の埃を払い、オホンと咳払いした。

「ようトワレ!久しぶりだな、元気か?」

「うわこの人全部無かった事にしたよ・・・・元気だけど・・・・」

ニャスパーがわーわーと騒ぎ出した

「それは何より。ニャスパーも元気そうだな!」

わしゃわしゃとトワレとニャスパーの頭を撫でる。

「どこか行くのか?」

「暇だからたまり場にでも行こうかと・・・・」

「そうか。折角会えたんだし、ランチでもどうだ?」

「・・・・・奢りなら行くけど」

「よし、好きなの頼め!」

「・・・・・・」

「~♪」

サザンドラをボールに入れ、鼻歌を歌いながらすたすたと歩くオードの背中を、

トワレはのたのたとついて行った。

・・・・この歌どこかで聞いたような気がする。

 

「ごゆっくりお過ごしくださいませ」

「ありがとう」

「・・・・」

カフェのテーブルに並ぶ、エネココア、パンケーキ、サイコソーダ、サンドイッチ。

それを眺めるトワレと、嬉しそうにおしぼりで手を拭き齧り付くオード。

「あ・・あの・・・・・」

「んー?」

「最近・・・どうなの・・・・・」

「俺は変わらずだよ。父さん母さんはお前の事を気にしてるようだったな。」

「・・・・・そう」

「お前はどうなんだ、楽しくやってるか?」

ちゃんとしてるか、とかでなく楽しくやってるかと聞いてくる辺り、兄としてどうなんだろうと少し思いつつ

「・・・うん、たまり場の奴らも、よくしてくれるし・・・」

ニャスパーもにゃぱにゃぱ!と楽しげにオードに話しかけている。

オードはニャスパーの顔を見てこくこくと頷いて笑う

「はは、そのようだな。それならよかった」

 

「ごちそうさま!」

「・・・ごちそうさま」

二人で手を合わせ、のんびりと飲み物を飲む

オードが勝手にニャスパーの飲み物も追加で頼み、大人しくそれにむしゃぶりついている。

「それ何・・・?」

「にゃぱにゃぱ」

「ふるーつのあじがするー」

「何フルーツ・・・?」

「にゃぱっ!」

「しらん!」

「・・・・・・・」

オードが淡々とニャスパーの言葉を翻訳する。昔からしてくれていた事だ。

平和で静かなカフェに、慌ただしい携帯の着信音が鳴り響く。

トワレの携帯画面を見ると、ブルクと表示されていた。

「・・珍しいな、もしもし・・?・・・・・・・は?」

頬杖をつき、オードがぼんやりとトワレを見つめる。トワレは深刻そうな顔だ。

「・・・分かった、俺が行っても何もならないけど、すぐ行く・・・・」

そう言って電話を切った。

「オード・・あの・・・・・仲間が・・・・・」

あせあせとニャスパーを抱き上げるトワレを見て、微笑んで小さくため息をついた。

「ああ、行ってこい。気をつけろよ」

「・・・うん、ごちそうさま」

小走りでカフェから出て行くトワレを見送り、伝票を取ってふわふわとした足取りでレジに向かう。

「はー、血は争えないってねー」

会計を済ませ店から出ると、再度サザンドラをボールから出し乗り込んだ。

 

たまり場の近くのコンビニの駐車場の隅で、四人の男に追い詰められているブルクの姿を見つけた。

「ブルク・・・っ!」

「・・・・・・・・・・・トワレ」

その上品なブルクの顔は赤く腫れている。

「テメェこいつの仲間か?誰かに電話しだしたからどんな野郎が出てくるかと思えば、またひょろっちいのが出てきたなあ!ははは!」

「・・・・・・・・」

不良のその言葉にかちんときて、ボールからムシャーナとフレフワンを繰り出し、抱えていたニャスパーを地面に降ろす。

三体にブルクとそのポケモン、

既にブルクの前で倒れているヨマワルとジヘッドの盾になるよう指示する。

「おいおい?それじゃあお前がノーガードだぜ!」

不良の一人がトワレに殴りかかる。

「トワレ・・!」

ブルクが声をあげ、トワレは腕でガードし目を伏せた。

「・・・・っ?」

が、不良の攻撃は来ない。

恐る恐る目を開けると、目の前には不良の拳を受け止めるオードの姿があった。

「・・・・・・・オード・・・!」

「あぁ?何だテメェは?このチビ共の仲間か?」

「・・・ああ、こいつの兄だよ」

相手の拳を強く握り込みながらも、にこにことし答える。

「・・トワレ、確かに今のは一体自分の元へ残しておく所だったね」

後ろを振り返りオードが言う。

「おい、お説教なら後に・・」

不良がいいかけると、オードがその頭に横蹴りをお見舞いする。

その瞬間、他の不良達がざわめく。

「な・・っ て、てめえ!!」

トワレとブルクは、オードを呆然と眺めていた。

「・・トワ、あの子を」

「・・!わ、わかった・・・!」

少し振り返り静かに言うオードの目は、今まで見たことが無い程威圧的な目だった。

「テメェぶっ殺す!!」

「やってみろゴルァ!!」

いつものオードには似合わぬオードの声を合図に不良達は三人まとめてオードに殴りかかるが、

オードはそれを軽く躱し、淡々と片付けてゆく。

 

死屍累々とした場の中心でグレーのロングカーディガンを翻し、ぱんぱんっと手を払う。

そのオードの姿を見て、ブルクが小さく口ずさむ

「・・・伝説の・・・・番長・・・・・?」

トワレは、日々ブルクから耳にたこができる程聞いている番長の話を思い返す。

「・・え?まさかオードが・・・・?」

オードは二人を静かに振り返り、いつも通り穏やかな笑みを湛え言った。

「人違いさ」

 

迎えに来たレドとライハにブルクを任せ、トワレとオードは再び二人になった。

「・・・昔何があったの」

トワレの言葉にまた微笑み、オードはくしゃっと頭を撫でた。

「お前も大人になれるさ」

答えになってないしとムッとしたが、何となくそれ以上は訊けなかった。

「あっ、いけね仕事の途中だった」

じゃあまたなとトワレに言い、また鼻歌を歌いながらすたすたと去ってゆく背中を見届けていると、

ニャスパーも同じ歌を歌いだし、トワレは思い出した。

・・そうだニャスパーが歌ってた歌だ。