*キャラクター

 

リーグチャレンジ中の少年

ヘレラ

 


ここはキルクスタウン、

年中雪が降り積もるガラル地方の極寒地域で

寒さを好むポケモンが多く生息しており

それを求めるポケモントレーナーは勿論、

寒いが観光地として栄え、名物の温泉目当てで訪れる観光客達の姿でも賑わう町だ。

 

トレーナーが多い為ポケモンセンターが目立つ所にあり、

更に暖かい服が充実したブティックや暖かいレストラン、

そして腕の立つトレーナー達が集う氷タイプのジムがある。

 

今日もまた、このジムに挑戦せんとする一人のトレーナーの少年が居た。

 

相棒達の準備は万全、必要と思われる道具も揃えた。

決して油断できない相手である事は、事前のリーグ委員長の話から分かっている。

小さく白い息を吐いてジムの自動ドアの前に立つと、

霜や氷柱を音を立てて潰し、音を立てながら開いた。

ヒュオ、と冷たい風が頬を刺す。まるで、既に試されているかのような気持ちになる。

まだ何も始まってはいないのに、妙な緊張感のあるジムだ。

 

ジムの中は一面、白と水色の雪景色だった。

凍った植物や、凍った池のようなもの、その中でピタリと時を止められた魚、

生き物達が終わりを迎えた歴史をまざまざと見せ付けられるようで

寒さに加え背筋が更にゾクリとした。

奥の方は吹雪いてるようで、様子が覗えない。

 

まず手始めに一番手前に見えるジムトレーナーに声を掛ける。

待ってたっスよー!と息巻く、いかにもガッツのありそうな少年。

それはそうだろう、こんな寒いジムに毎日何時間もだなんて、根性が無いと務まりはしない筈だ。

勿論しっかりと防寒はしているようだが、その鼻先は赤い。

最初のトレーナーで躓くわけもなく、あっさりと

未だ進化の時すら迎えぬポケモン達をのしてゆく。

戦闘を終え、お小遣いを手に入れ、また歩みを進める。

 

実際に対峙し得た感触を頭の中で反芻し、

あらかじめしておいたイメージトレーニングに修正を加える。

そしてまたトレーナーとバトルし、修正、

それを繰り返し歩いていると、大分吹雪いてきた。

 

両腕で顔を庇い、前のめりで進む。まるで雪山遭難者だ。

すると、ずっと拓けていたジムで突然壁が眼前に現れた。

見上げるとそれは巨大な岩のようだった。下半分は地面に埋まり、

少し向こうにはこれを取り除いたような、大きなクレーターが見えた。

この景色は・・この岩は、きっと・・・・

ぶんぶんと頭を振り、ジムのクリアの事だけ考える事にしてまた岩を避けながら奥へ進んだ。

 

少し吹雪が収まったのを不思議に思い顔を上げるとそこには、高い高い天井に届きそうな程巨大な氷。

その中にはまた巨大な恐竜の骨が、こちらを見下ろすように氷漬けになっている。

その荘厳さに、瞳も無いのに睨まれるような恐怖に言葉を失い、動けなくなった。

やっぱり、さっきの岩は隕石だったんだ。

 

『見事なものだろう』

頭上から声がして、ようやく我にかえった。

辺りを見回してみるも、誰の姿も見えない。恐らくスピーカーか何かから聞こえてくるのだろう。

『残念ながらただの模型だがな、本物はあるべき所に寄贈したのだ』

落ち着いた男性の声。だがどこか、声色だけでも威厳さを感じさせる。

『その恐竜の先、回り込んだ裏に先へ続く道がある。キルクス氷ジム最後の場所だ。待っているぞ』

“待っている”・・という事は、このジムのリーダーの声だったという事か。

いよいよだ・・・・ 恐竜を見つめながら氷を周り、最後の部屋へ向かう。

 

暗く細い道を抜けると、パッと視界が晴れ、強い照明と大歓声に迎えられる。

他のジムと同じ広いスタジアムだが、やはりここは寒い。よく見ると隅の方は雪が積もったままになっている。

バトルコートを見ると、既にジムリーダーが待機していた。

すらりとした立ち姿に似合いのグレーのロングコートに、水色のブランケットを緩く羽織り、

自分や他のジムリーダーと違い、長ズボンの白いユニフォームを着て、

水浅葱の長い髪をひとつに結い上げた、端正な顔をした背の高い青年が、目を伏せ

長い黒マフラーを触り、もふもふと口元を暖めている。

 

正面に立つと、青年は目も合わせず言った。

「待っていたぞ、中々やるようじゃないか。改めて名乗ろう、」

静かに顔を上げ、真っ直ぐにこちらを見た。

鋭く、まるで氷漬けにされるかのような錯覚をおぼえる金色の瞳。

不意に、先程の恐竜を前にした時と同じ感覚に見舞われる。

「俺はヘレラ。キルクスジム最後の砦。」

クイックボールを取り出して構え、口元のマフラーをくい、と引き下げると

白い息に紛れ鋭い牙が見えた。

「お前のトレーナーとしての手腕、試させてもらおう」

わっと観客が湧き、両者がボールを投げた。

開幕だ。

 

 

 

To be continued.