「・・・・・父様」
首領の顔を眺めたまま、静かにセンが呟く。
「・・・なんだ」
「俺、外での仕事をしていたいです」
「デスクワークに飽きたと言いたいのか?全く我儘な奴だ」
軽々とセンの身体を抱き上げ、側らの広いベッドへ乱暴に放られ、
そのまま気だるげに転がる。
「地位に金に美貌までくれてやったのに、まだ足りぬと言うか」
巨大な身体でゆっくりとセンへ近寄る。
「・・・・・はい」
それをセンは真っ直ぐに見据え、静かに答える。
「ならば分かっておろうな?うちのルールは」
「・・・欲しければ実力で奪い取れ」
上体を軽く起こし、シャツのボタンを片手で外して薄く笑みを浮かべ、
指先で父を挑発してみせる。
「はっ、生意気な奴よ」
手でセンをベッドへ押さえ込む。
「優しくなどせぬぞ」
耳元で低く囁かれ、センは目を閉じ答えた
「構いません」
「・・・・・・父様」
「ああセン・・・・私の息子・・・・」
センの頬を包み込む程大きな手で、優しく撫でる
「髪を下ろすと本当に亡き母にそっくりだ・・・美しい・・・・・」
光の無い据わった瞳で、父の顔を見つめる
「扇情的な瞳だ・・・・抑えが利かなくなるだろう」
目を離さぬまま、センの薄い身体に口付けた
「それとも・・・誘っているのか?」
センはふいっと目を逸らした。
「その冷ややかな視線・・・美しい。それでこそ次期首領だ」
そう言うと首領は舐めるようにセンの身体をまさぐった
「・・・・・・・・っ、」
センの口からは、僅かに息が零れた。
センは若くして病に倒れた、首領の愛人との子だ。
よく覚えていないが、それは美しい女性だったらしい。
だが首領の持つすべてを以てしても、その病には敵わなかったそうだ。
以来センは引き取られ、首領に立派な悪としてここで育てられてきた。
今センはカポ・・・ソルジャーと呼ばれる、所謂正社員達を束ねるリーダー的位置に居る。
本来ならアンダーボスが次期首領なのだが、今は諸事情により空席になっている。
ならば側近のコンシリエーレであるスーカオが次期ボスになるべきなのだが、
首領は可愛がっているセンをカポから一気にボスに格上げする気でいる為、いつもあの態度なのだ。
実力はセンより遥かに上なのは確かなのに、そんな理由でボスになれないとなると道理だ。
スーカオには、センはその立場に胡座をかいていると思われているらしい。
その本心は単にやる気がないだけ、カポの仕事も殆どをソルジャーに任せている・・・・
センはシーツの上でべったりと倒れ、折角綺麗にされた髪が乱れてしまったな、とぼんやり考えていた。