*キャラクター

セン

首領

スーカオ

ジーワン


AM 11:15、センは自室のシャワーを浴びていた。

ここはマフィア“ライギ”の根城。

かつては奥ばった所にあるホテルだったが、それを買取り占拠した場所だ。

ワイズガイと呼ばれる正規の構成員達の内、希望した者だけがここに住んでいる。

センの部屋はその最上階のスイートルーム。

空間を贅沢に使った広々とした部屋には巨大なベッドが置かれ、高級なソファーや絢爛豪華な装飾で飾り立てられている。

中でも一際目を引くのが、真紅地に金色の糸でホウオウがデザインされた絨毯。

煌びやかな彼に引けを取らない一級品だ。

 

バスルームから裸足でひたひたとクローゼットへ向かい、適当なシャツとスラックスを履いて部屋の外へ出る。

大きな扉を開くと、部屋に居た他の幹部達とボスがセンを見た。

皆テーブルにつき、手元には書類を広げ、重々しい空気だった。

「・・・・・・セン」

最初に口を開いたのは眉間に皺を寄せたコンシリエーレ・・・ボスの側近であるスーカオだった。

「貴様今何時だと思って・・・それに何だその格好は!」

「スーカオ、よい」

声を荒立てるスーカオを、マフィアの首領が静かに制し、椅子を指差す。

「セン、座れ」

「はい」

席に座り、未だ濡れて下ろしたままの長い髪を払う。

床に水滴が落ちるのを眺め、メンバー達は皆苦い顔をした。

「さてセンよ、お主仕事はどうする」

そんなメンバー達を気にせず、首領がこれからの行動について問う。

「俺は偵察にでも行こうかと」

涼しい顔で言ってのけるセンに、スーカオが立ち上がる。

「貴様呑気に散歩にでも行くつもりか!」

「やめろスーカオ。センは偵察でよい」

「ボス!何故そのようにセンを甘やかすのです!」

「貴様には関係の無い事だ 」

首領が冷たく言い放ち、スーカオの手元の紙を指差す。

スーカオは黙ってペンを握り、セン・偵察と記した。

 

首領がまじまじとセンを見据えた。

「・・・セン、そのように濡れたままでは折角の美しい髪が傷んでしまうではないか。ジーワン、乾かしてやれ」

「は、はいっ!」

指示を受けた女が立ち上がり、センを見る。

「ではセン様、お部屋へ・・・」

「ああ」

ジーワンが首領に一礼してから皆の前をへこへことしながら通る。

その後に続いて、まるで誰の事も見えていないかのようにセンがついて行った。

 

センの部屋で、二人でソファーに座り髪を乾かす。

「・・・どこか、乾いていない所は御座いませんか」

「ああ、無いと思うが」

ドライヤーのスイッチを切り、少し触って確認する。

「大丈夫なようですね。では髪を梳きま・・・」

手元の櫛を探していると、センが背後のジーワンに気だるげに凭れ掛かる。

「セ・・・セン様・・・っ!?」

「なんだ」

真っ赤なジーワンに対し、眉ひとつ動かさないセン。

「あ・・・あの・・・髪が、梳けません・・・」

「そうか」

「・・・・・・」

変わらずセンは目を伏せ凭れ掛かったままだ。

長い睫毛に陶器のような肌、可愛らしくほんのりと桃色の薄い唇、

その作り物のような顔に触れようと、おずおずと手を近付けた瞬間、ドアが開き首領が現れた。

「何をしている」

「・・・っ!」

首領の冷たい瞳に睨まれ、ジーワンは硬直する。

その冷たい瞳を、センも変わらずぼんやりとした眼で眺めていた。

「乾かし終えたのか?」

「は・・・はい・・・」

「ならよい、下がれ」

「失礼しました・・・!」

凭れていたセンを押し退け、走って部屋を飛び出す。

センが倒れる前に、首領がその巨大な手でその背を受け止めた。

見つめ合った状態で静止し、センは

首領の長い髭に隠れた口元が釣り上がるのを、やや虚ろな瞳で眺めていた。

 

To be continued.  ルートA

          ルートB(R-18)